#36 前腕の運動について

ゴルフスイングでかなりの自由度を誇るのがこの前腕の運動。
スイング中の前腕の運動について解説していきます。

腕と手

まずは腕と手について解剖的にみてみましょう。
腕は「全体的」な表現で、「手」は手首から先の部分を指す言葉です。そして腕は「上腕」と「前腕」に分けられます。
上腕は肩から肘までの部分、前腕は肘から先の部分を指します。
前腕の動きを表現すると「回内」「回外」「掌屈」「背屈」「尺屈」「橈屈」と言う運動から動きが成り立ちます。よく間違いやすいのが、上腕の外旋と前腕の回外、内旋と回内を同じと捉えてしまうこと。動く部位が違うのでここは分けて考えなければなりません。

また手も多くの動く部位を持っています。骨の数は足の次に多い部位になり、関節も多く存在します。
第一関節からDIP関節(遠位指節間関節)、PIP関節(近位指節間関節)、IP関節(指節間関節)、MP関節(中手指節関節)、CM関節(手根中手関節)。このような作りになっています。

前腕は親指側に橈骨、小指側は尺骨で成り立っています。

前腕をうまく使うための条件

ゴルフスイングにおいて、前腕の動きはボールをコントロールする上でとても重要な働きをします。
しかし、前腕をうまく使えてないプレーヤーは多くいらっしゃいます。一番の課題はこの前腕をコントロールするために上腕を安定させなければいけないと言うことです。
ゴルフスイングで重要なポイントは、肩甲骨が可動関節(360度動く関節)なので、この関節をどうコントロールするのかがとても重要です。肩甲骨は下制、下方回旋で安定位に入ります。この時、上腕も中立位より外旋位にある方が肩甲骨は安定します。ゴルフのアドレスでは、上腕が外旋位、前腕は回内位にてアドレスを形成します。

スイング中も上腕の外旋位は変えずにスイングすることで腕全体をコントロールすることができます。しかし、肩甲骨の可動域が狭いプレーヤーはグリップを変化させ対応しなければならない可能性もあります。私がBalanceGolfスクリーニングを行った結果、日本人の多くは前腕の回内角度が乏しいです。比べて、回外は得意です。そのためグリップはウィークになることが多く、ストロンググリップを推奨されることは稀です。

苦手なコック

ゴルフが苦手という方の多くがコッキングが苦手だと思います。
ゴルフにおいてコッキングとは、3Dで考えるべき運動です。コックというと右手の背屈ばかり目に見えると思いますが、実際は右手は背屈+少しの橈屈、左手は掌屈+橈屈が入ります。コックが安定しない原因は左手の動きです。前腕の構造として手首を背屈した状態で橈屈すると大きな可動域を得られます。しかし、掌屈した状態で橈屈しても少しの可動域しか得られません。ゴルフ的にこのコックという動作は手首とクラブの角度として90度を超えることは危険です。なので、左手が掌屈+橈屈した可動域以上のコック動作は必要ではないのです。
安定したコック動作が行えない原因は、左手首がコックの際、背屈してしまい大きな可動域を得てしまいコントロールを失うことです。なので、改善するためには左手首のコーディネーションが必要不可欠です。

リリース

コッキング動作の反対として、アンコックまたはリリースと呼ばれる動作があります。
この動作はパッティング以外のスイングでは必ず行う動作であり、この動作が行われないとボールを打つことが困難になります。

上記で左前腕のコーディネーションが重要と記しましたが、このリリースにおいても左前腕はとても重要です。
リリース動作において難しいのは、スクーピングのように手首が左背屈、右掌屈状態(右打ちの場合)でインパクトするのと勘違いが起きやすいのが現状です。ほぼ同じ動作なのですが、はっきり言うと全く違う動作になります。なぜうまくいかないのか。それは軸(支点)が違うからと言えます。
スクーピング動作の場合、右手が支点となり運動が行われます。しかし、ショット時の動作として右手首が支点となってしまうとスクーピング動作に繋がり、ダフリやトップ、ダイナミックロフトの過剰な上昇傾向によっての飛距離低下などが起こります。また、インパクトの衝撃に手首が耐えられなくなり、けがにもつながる運動です。
左手首支点として、同様の動作が行われることでローポイントの安定、および、ダイナミックロフトの安定、そして手首の構造的にストレスに強くなるため怪我も防げます。

クラブのローポイントについて様々な見解がありますが、私の考えでは左片手でスイングした際、左肩の真下がローポイントと考えています。両手でグリップした場合、左腕が強く働くため、両腕の中央よりやや左目に来ることが考えられます。しかし、体の可動域、グリップによってこのローポイントも変化するため一概にどこがローポイントになるのかと言うことは言えないのが現状です。
しかし、リードサイドの腕を支点としたリリース動作を行えば、ローポイントはリード側に落ち着くため、スクーピングや先に挙げた症状は発生しづらいと考えています。

リコック

リリースされたクラブはハンドスピードを追い越し、クラブが手より先行します。この時、手首はリコックと呼ばれる動作が行われます。このリコックはクラブをうまくリリースでき効率的にクラブに加速度が与えられると見られる現象です。

リコックとは、バックスイングで行われたコッキングの反対の動きになります。
右打ちの場合、左手首の背屈+橈屈、右手首は掌屈+橈屈されます。
このリコックが起きるポイントははっきり決まっておらず、多くの場合、P9(フォロー側右腕が地面と平行位置)周辺で行われます。

リコックはバックスイングのように構造的に行われるわけではなく、自然な流れで行われることが理想です。フォローでの遠心力に対して、身体側で理想的な求心力を与えられることでクラブに加速を与えた結果の動作です。なので、自分の力で能動的に行ってはならない動作です。
リコックはフィリッシュ時に過度な肩甲骨可動を抑制する働きも兼ねています。そのため、スイングして左肩に違和感があったり、左肩の挙上や上方回旋などスイングの詰まりが発生している時にみるべきポイントと言えるでしょう。

うまくリコックできない構造的な原因はリード側上腕の内旋です。フォローで上腕が内旋していると、前腕の外旋がうまく機能しなくなり、リコック動作も不自然な形でフィニッシュを迎えます(チキンウィングなど)。
バックスイング同様、上腕のポジションを見極めることでストレスを減らし、理想的な運動に導けると考えられます。

前腕をうまく使うには、上腕をいかにコントロールできるか。
重要性が理解できたと思います。
次回はパッティングの距離感について。解説していきます。

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